His Memorial Fish
息子が7歳を迎えた年の初夏のある日、バス釣りに連れて行こうと思い立った。もともと彼は釣りに興味があるようで釣堀などに連れて行くと2歳年上の姉より根気よく釣りをしていた。そんな彼をいつかは本当のフィールドへ連れて行きたいと常日頃から思っていた。

フィールドは 普段私が良く通っているところで、小バスならばイージーに釣れる。

自宅を出て1時間かけてそのフィールドに到着し、スピニングタックルにグラブのジグヘッドリグをセットし、まずは私がキャスト。そしてキャスト後に息子にロッドを渡してアドバイスをする。

「いいか、10まで数えてからゆっくりリールを巻くんだぞ。」

息子は私の指示通りに「1、2、3、・・・10」と声を出しながらリールを巻き始めた。

同じ動作を2〜3投繰り返した後、ティップに“プルプル”とバスのアタリがあり、私が息子のロッドのバット部分を掴んでアワセてやると待望の最初の1匹が釣れた。


「やったー!つれた!つれた!」

初めて釣ったバスに息子は大喜びし、私は次こそは彼一人の力で釣らせてあげたいと強く思い、少々難しいとは思ったがキャスティングを教えることにした。

「いいか。上から投げると糸が絡んでしまうから、これくらい長く垂らして振り子のようにこうやって・・・」

と4〜5メートルぐらい先にグラブをポチャンと落としてみせる。

息子は「こうして、こうしてと・・エイッ」と四苦八苦しながらキャスティングを始めた。

はじめてのチャレンジのため当然2メートルぐらいしか飛ばない。

しかし息子はそんな飛距離や着水ポイントなど関係なく、教えたとうりに10を数えた後にリールを巻き始める。

何回かそんなキャストを繰り返していると、だんだん4〜5メートルは飛ぶようになってきた。

そんな動作を何度も繰り返しつつ、飛距離が伸びてきた頃、「きた、きた!」と息子が叫んだ。私が振り返って見ると

“バシャバシャ!”とバスが釣れてきたが残念ながらすぐにバレてしまった。

私の方を振り返り、どうして?という顔をしている息子に、今度はアワセを教える。

「いいか、今みたいにプルプルとバスのアタリを手に感じたら、こうやって竿を引いてあげるんだ。針を魚の口に突き刺すためだよ。」

「うん、わかった。やってみる。」

再びキャストを繰り返している彼を後ろから見守っているとしばらくして、ついにアタリが来た。

バスがバシャバシャとファイトを開始してからの不器用なアワセではあったが、キャストからアクション、アワセに至る一連の動作を彼が自ら行い自分ひとりで釣り上げた記念すべき1匹目のバスとなった。

「やった!やった!とうさんはじめてじぶんでバスつったよ。」

はしゃぎながら左手でバスをぶら下げて息子は大喜びしていたが、それ以上に私は感動していた。

その日は絶好調で、息子は何匹かのバスを釣り上げることができ、大満足して帰宅した。



思い出せば私が始めてバスを釣ったのは13歳。当時はちょうどルアーブームの頃で、近所の釣具屋で買ったお気に入りのプラグを1個だけ持って、父親に無理を言って釣りに連れて行ってもらった最初の釣行で釣れた。

バス釣り自体が始めてのことだったので、ただひたすらそのプラグを投げては巻いていた。当然アタリもなく時間だけが過ぎていったが、初めてのルアー釣りということもあり、つまらないと感じることは全くなかった。

何時間も投げては巻き、投げては巻きの動作を繰り返していたが、ふと、ただ巻くのではなくロッドでアクションをつけながら巻いたらどうかと思い、適当にロッドアクションをつけて巻いていたら運よくバスが釣れた。それが最初のバスだった。そして幸運は続き、バスを釣ったその次のキャストにもヒットしてきたが、それは惜しくもバレてしまった。

今でも忘れることのない程に印象深い人生最初のバスだった。しかし、最初の釣行で人生初バスをキャッチしたためなのか、その後は運に見放されてしまい、2匹目のバスを手にするまでに2年ほど経過することになったのだが、その2年間は全く釣れなかったにもかかわらず不思議とつまらないと感じることもなかった。

多分、最初の1匹のインパクトが強く、その後の2年間はあの1匹目に感じた喜びよもう一度ということで必死になって2匹目を追い求めていたのかもしれない。つまり、あの時の1匹目のバスが無ければその後に釣りをしていることはなかったかもしれないし、自分の息子がバスを釣り上げることも無かったかもしれない・・・そんな全ての運命を左右したかもしれない大切な思い出のバスだった。



数週間後、息子にせがまれて、またバスを釣りに出掛けた。

既にバス釣りをマスターした息子にはアドバイスは要らず、再び彼はバスを釣り上げることに成功した。そして今回は息子は自分で考えて、もっと効果的に釣りができるようにと行動を起こした。

今までは私の横に立って釣りをしていたが、自分の釣りたいポイントを自分で探して釣るようになったのだ。

さらに私のキャストを見て、オーバーヘッドキャストをしているではないか!

当然、最初からうまく飛ばないが、誰に教わるわけもなく自分でチャレンジしている。

何投か失敗を続けるが、しばらくすると不思議と前に飛ぶようになってきた。そして遂にそこそこのサイズを釣り上げてしまったのだ。その瞬間、またまた父親として感動してしまった。

その日は次のステップとして釣り上げた後のフックオフとリリースを教えた。

彼は7歳。私の初バスより6年も早くキャッチすることができた。そのバスは彼の記憶に残り、そして良い思い出となるのだろうか?

今後、私とではなく友達と出掛けたときにバスを釣り上げることができるのであれば、きっと、もっとすばらしい思い出になるだろう。かつての私がそうであったように。

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