An Insight
その釣行は初日から大荒れだった。

激しい雨と風によってフィールドは無茶苦茶になっていたし、気温も下がっていた。今年というより、ここ数年は天候不順が目立つようになっており、空梅雨だと思っていると急に大雨が続いたり、梅雨が終わったと思ったら台風が連発、そして連続して同じ地域を直撃するようなことも珍しくない。低活性のことが多い雷魚にとっては、この天候不順は更に活性を下げる原因となり、もちろん釣り難い状況になっている。

幸運にも2日目は朝から快晴となり、風も無風に近い状態になっていた。真夏に相応しい暑い日差しが早朝から照り付け、あちこちから雷魚の捕食音が聞こえてきた。

私は蚊に狙われやすい体質のため、防虫スプレーを念入りに塗り、日焼け止めもバッチリ塗りこんだ。増水によって田んぼと水面が面一状態になっているので、ニーブーツを履いた。

車を停めた場所からポイントまでは数百メートルある。田んぼのあぜ道を崩さないように気を配りながら歩いた。人の背丈よりも高く伸びた葦の向こう側からは豪快な捕食音が聞こえてくる。はやる気持ちを抑えながら足早に進んでいった。

300mほど歩いたところに、人が1一人入れるくらいのスペースが見つかった。田んぼからの流れ込みのようだ。朝露に濡れた葦を掻き分けてキャストできる場所まで入っていくとそこにはイイ感じになった菱のカバーが一面に広がっていた。

「これだよね、これ。」

私の口元は緩んだ。そして一人悦に入りながら、どこへ投げ込もうか考えた。目の前に美味しい料理が並んでいて、まず始めに何から食べようか迷っているような、まさにそんな感じだった。

周りが葦に囲まれていて、しかも降り続いた雨によって水量が増えているので足場が悪い。キャスティングのスペースを確保できないため、第一投目は投げやすい目の前にあるオープンスペースの向こう側にあるカバーに狙いを定めた。



捕食の頻度も高く、コンディションも良いので、ズル引きしながら引き波で大胆に誘い、長めのポーズを入れてタイミングを計った。しかしフロッグへの反応は無い。まあ、一投目なんていつもこんなものだ。私は2投、3投とキャストを繰り返した。しかし、フロッグへの反応が無い。私は雷魚の動きを見つけるためにロングポーズを入れる間に周りを見渡した。ズル引き、そしてポーズの間は周りを見渡すという動作を繰り返した。

すると、太陽の光が反射する手前のオープンスペースに雷魚の口先がスッと現れた。呼吸だ。

私は右手を超高速回転させ、フロッグをそのオープンスペースに誘導した。

フロッグは意図的に動かさず、惰性でオープンスペースを漂わせた。その漂うフロッグに雷魚が気づいたようで、フロッグの1mほど横で波紋が立った。

「付いたな」

水面には太陽が反射して雷魚の姿は見えない。しかし、フロッグの下からは雷魚の気配がヒシヒシと感じられた。

いきなりバフッと出るのではないかと、こちらはアワセる態勢に入っているが、しかしなかなか喰ってこない。こういう場合はフロッグを動かさずにポーズを入れ続けるのが効果的だ。そして予想通り、3秒ほど経ってから吸い込むようにフロッグを喰った。



その後も捕食音は断続的に聞こえていたし、いたるところから雷魚の気配が漂っていたので、活性が高いことは確信できた。しかし、ここぞと思うポイントへ投げ込むフロッグへは反応が全くなかった。スレていることは間違いないが、それにしてもフロッグへのアタックが無い。

早い動きでスピーディに誘い、雷魚の反応を見ようとしても、全く駄目だ。私はキャストを止め、水面を見渡すことにした。集中力を高め、水面を注視するとすぐに15mほど先のヒシがスッっと持ち上がるのが見えた。私はすかさずフロッグを投入した。誘いのアクションをする間もなく「ズボッ!」という音とともにフロッグが消えた。

今までのアプローチが全く無意味だったと思えるほど簡単に雷魚が釣れた。

水量が増え、水面積も増えたために菱の密度が低くなり、雷魚の動きが分かりやすくなっていることもあるが、水量が増えたことによって私の目と水面との角度がなくなり、カバーの動きが手にとるように分かるようになっていた。

その後は、雷魚の動きを見つけて狙い撃つことに専念した。リールのクラッチを切り、いつでもキャストできる体制のまま、近距離の比較的カバーの薄いエリアを食い入るように見つめ、雷魚の動きを見逃さないように集中した。

そして、雷魚の呼吸を見つけてはキャストし、ほぼ100%に近い確率でアタックが取れた。

晴天、湿度が高くて蒸し暑い状態、そして無風、水量増によるカバー密度の低下という条件が揃い、雷魚が呼吸をするときのヒシの盛り上がりが手にとるように分かったことは初めてのことだった。もちろん、目線と水面の角度や太陽の位置も重要な要素だった。オープンスペースに浮いてくる雷魚の呼吸を見つけることはあっても、カバーエリアで見つけることができる状況というのは経験したことがなかった。



その日の出来事を境に私のスタイルは大きく変った。

見た目のカバーの雰囲気だけでキャストを繰り返していた頃は雷魚の動きのほとんどを見落としていたということに気づいたからだ。

雷魚は底のほうでじっとしている低活性の時間が多いとはいえ、捕食、呼吸、移動、浮遊・・・カバーの下では様々な動きがある。それらを見つ出す眼力を備えることは雷魚ゲームを更に面白くしてくれるだろう。

Back to earnest column Top