My Memorial Fishing Trip
異常気象が叫ばれ、超大型台風が連続して日本を直撃し、各地に大きな被害が発生した今年の夏の終りに、10歳になった息子を誘って遠征に出かけた。

息子が産まれてから、いつか一緒に雷魚を釣りに行きたいとずっと願っていて、それを実行した形になった。

なにも台風の被害が出ているような年の夏の終りに出かけなくても、来年の春まで待てば比較的楽な釣りが期待できるのだが、息子が一日でも幼いうちに雷魚釣りを経験させたくて、タフコンディションが予想される中での釣りを決行した。

また、春から本格的にバス釣りを教えているなかで、これくらいできれば雷魚釣りに行けるなと判断できるレベルに達してきたタイミングもそうさせた。

息子には前から雷魚釣りの面白さを話し、遠征=旅行=泊り=おいしいご飯=男同士のイベント という図式ができており、二つ返事で快諾された。


初めて見るフィールドは、彼のイメージとは異なっていたようで、水面を覆い尽くすヒシ、ハス、ウキクサに驚き、なぜ水面が見えないところで釣りをするのか疑問を持ったようだった。

しかし、それもつかの間、生命感のあるその野池の雰囲気をすぐに感じ取り、フルオープンの池からは感じられない「あの」雰囲気を10歳の子供でも、いや、子供だからこそ我々大人よりも敏感に感じ取っていることを、隣にいた僕もひしひしと感じた。

「この水面を覆い尽くす水生植物が大事なんだ。なんか釣れそうな感じがするだろう」

「・・・」

こんなカバーの池で何がどうなるのか見当もつかない様子だったが、僕のキャストしたフロッグにいきなりバイト(多分、ナマズ)が出たこともあり、魚がフロッグに喰いつくことが証明され、テンションが上がった。


小学生の息子にはバス釣りに連れて行き、ルアー釣りがどんなものか、ルアー釣りは基本的に釣れない釣りで、釣行のほとんどを場所探しに費やすことを教えてきた。

また、今回の雷魚釣りはバスよりも釣れなく、タックルは特殊なもので扱いが難しいことも教えた。

そんな息子用のタックルは、ロッドはホッツのSR59バンタム、リールはバスプロショップのオリジナルのクローズドフェイス、ラインはPE6号、フロッグはウェイトがあって初心者でも使いやすいロデオクラフトのクロークをチョイスした。

ロッドは短くて子供でも使え、強度も申し分無く、この日が来た時に使おうとずっと保管しておいたものだ。問題はリールだった。ベイトキャスティングリールは使った事が無く、まさか、スピニングリールを使うわけにはいかなかった。巻き取る力不足もあるが、太いPEラインによる糸ヨレのトラブルは避けたい。

考えた末、パワーハンドル装着でドラッグの強いものを、クローズドフェイスの中から探してみたらアメリカのバスプロショップオリジナルの中に「エクストリーム」という名前のモデルを見つけ、今回の釣行で使ってみることにした。


しかし、実際にフロッグをキャストすると、問題が浮き彫りになった。

予想はしていたが、クローズドフェイスはその構造上、ラインが常にインナースプールのフチとカップ出口のフチに接触し、特にキャスト時は太いPEラインでは強いテンションが掛かり、全く飛ばない。更に、スピニングよりもラインがヨジレることも分かった。僕でも取り扱いが無理なので小学生の息子では見ていて可哀想なくらい飛ばない。

僕は思い切ってABUの6500Cに切り替えることを提案してみることにした。

「なあ、そのリールだと全く飛ばないから、ちょっと使い方が難しいけど、俺と同じリールにしてみないか?」

「・・・」

「投げ方を教えてやるから、やってみようぜ」

と、ベイトキャスティングリールに拒否反応を示していた息子を説得してリールを取り替えた。

バックラッシュをできるだけ防ぐため、フロッグの自重ではスプールが回転しない位までメカニカルブレーキを締め込んだ。

右手の親指でスプールを押さえ、左手でクラッチを切り、振りかぶったら左手でロッドのリアグリップを引き、フロッグが自分の頭の上に来たらスプールの親指を離し、フロッグが着水する前にまた親指でスプールを押さえて回転を止める。

右手の親指でスプールを押さえたままロッドを左手に持ち替え、右手でハンドルを回すとクラッチが戻り、ラインを巻き取る。

鈍臭い小学生の息子がこの一連の動作を習得できるわけないと思っていたが、いざやらせてみるとたった数メートルの飛距離だったが一投目からバックラッシュなしでキャストができた。

「右手の親指を離すのが遅いからフロッグがすぐ手前に落ちたんだ。今度は今よりも早いタイミングで親指を離してみろよ」

すると「ビュッ」というロッドがが空気を切り裂く音とともに10メートルくらいのキャストが決まった。

鈍くさくてどうせ投げられやしないと思っていたが、息子の成長をこんな場所で垣間見ることになり、キャスティングしている息子をしばらく感慨深く見つめてしまった。

これなら2日間の釣行を乗り切れるなと思い、「凄いじゃないか!大人用のタックルを使えてるぞ」

と褒めちぎり、そのまま釣りを続行した。


地図とカーナビを使って次から次へと野池を移動し、ヒシのカバーやハス、ウキクサ、それらの複合カバーを手を替え品を替え、夕暮れまで攻めていったが、結局一匹も釣れなかった。

台風直後というお世辞にもイイとは言えないコンディションで、僕らは完全にお手上げだった。

しかし、そんな状況でもつまらないと感じることは全くなかった。

フィールドを移動する毎に僕がどんな雰囲気、条件の野池を探しているのか息子も段々分かってきたようで、車の助手席の窓から野池を見つけては、

「あそこの池はハスとヒシがあるよ」

「あそこの池は何もないからダメだね」とか、コメントを言うようになり、目指すフィールドで車を停めてタックルを降ろして準備をしているときには、そのフィールドの雰囲気を感じ取っていることも伝わってきた。

秋を迎えたフィールドでは、突き抜けるような青い空や、水面を飛び交うトンボ、変化に富んだ水生植物の織りなす景色が見え、草むらからは夏の終わりを告げる虫たちの声が聴こえていた。

そしてそれは僕にとって、十数年前に初めて訪れたこの場所で、いつかは自分の子供と一緒に雷魚釣りに来てみたいと思っていたその夢が叶った時だった。

雷魚が釣れれば最高だったのだろうが、そんなに欲張ってはバチが当たってしまう。また、釣れない厳しい状況だけれど、この釣行自体を楽しむことができている新しい自分がいることに気付いたのも大きな収穫だった。


次の目標は、息子と2人共、雷魚を釣り上げること。

この新しい目標が僕のモチベーションを高めてくれる。もちろん僕は90アップを狙い、父親の威厳を見せつける予定でいるのはいうまでもない。

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