An Attack After Hard Rain
雷魚釣りのシーズンは夏なので、フィールドコンディションはもちろんのこと、釣行予定も台風に左右されてしまう。だから毎年夏になるとの台風の目の動きが気になって仕方が無い。台風の場合、風の心配というより降水量が問題だ。水位の急激な変化はストラクチャーを変化させることはもちろん、水温の低下、濁りを発生させてしまう。それに、浮葉植物であるカバーは流されてしまう。しかし実際は台風が近づいてきたからと言って、釣行を延期するということはない。簡単に釣行予定を変更できないのはいくつか訳があるが、その一番の理由はシーズンが短く釣行回数が非常に少ないために、多少の悪条件で中止にすることができないということだ。また、何日も前から会社には有給休暇の届けを出し、その日を心待ちにしているので、たとえダメと分かっていても出かけたいと思う気持ちも強い。

幸運にも僕と古い友人は生まれながらの晴れ男なので、釣りが出来ないほどの悪天候に遭うことは滅多に無いし、実際に釣りが不可能になったことはない。

しかし、そんな晴れ男な僕達だが、過去に一度だけ台風前の大雨の中で釣りに行ったことがあった。


ちょうど雷魚専用ロッドが出た頃だったと思う。その年の夏もまた、数少ない友人との釣行を心待ちにしていた。しかし、不運にも台風が接近しており、風はそれほど強くはなっていなかったが、大きな低気圧がその地域を覆っていた。低気圧の勢力は強く、大粒の雨が降り続いていた。

釣行する予定のフィールドは野池。一部分は護岸工事されているが、大部分は自然のままであり、雑木林の中を歩いて、更にはウェーディングしながらポイントを目指すようなフィールドだ。その池はよくある平地にある皿池とは違い、堰堤側は比較的水深がありオープンエリアとなっていて、その反対側が水深が浅く、綺麗な緑のハスが広大なりリーパッドを形成していた。僕は手に入れたばかりのOFT飛強に使い慣れたABU5500Cを、友人は、リリーパッドハスキーにABUの5000Cというタックルで望んだ。

釣行予定が近づいても雨が上がる気配も無く、天気予報は数日間は雨が降り続くだろうと言っていた。もちろん、台風の進路次第では、暴風雨にも成りかねないというコンディションだった。一緒に行く予定の友人に電話をかけると、気の無い返事が返ってきた。その友人は地元なので、こんな悪コンディションの中で釣りに出かけなくとも、天候の回復を待ってからでいい。しかし、遠方から帰省してまで釣行する僕はそうはいかなかった。そんな僕の気を察してか、その友人は渋々ながら釣行を承諾してくれた。



フィールドは増水していた。それに、枯れ始めているヒシのカバーは、増水と相まって、その多くが沈み始めていた。いつものとおり、雑木林側からアプローチを始めるが、雑木林の際まで水位が上昇しており、バックスウィングのスペースを考えると胸あたりまでウェーディングしなければならない状態だった。大粒の雨に打たれながら胸までウェーディングしての釣りは困難を極めた。そもそも、この雨では雷魚から水面のフロッグは見えやしないだろう。

僕達は早々に退散し、車に逃げ帰った。秋が近づいていることもあり、雨で濡れた体は寒かった。僕達は休息を兼ねてラーメン屋で暖をとることにした。


午後になっても天候は回復することはなかった。午前中に攻めたヒシのエリアは沈黙していたので、僕達はハスのエリアを攻めることにした。通常であれば、水深がほとんどない岸際のハスも水にたっぷりと浸っており、葉と葉の隙間の無い状態と比較すれば、見た目では増水の影響でフロッグを投入できるスポットが数多く生まれているように思えた。

ハスが得意ではない僕は、イマイチ気分が乗らなかったが、ヒシのエリアでは全く反応が無かったため、仕方なくそのハスの場所で釣りを再開した。するとどうだ、釣り始めてすぐに友人のピンクのスナッグプルーフSKフロッグに雷魚がアタックしたのだ。

見間違えたか、それとも食用カエルのアタックじゃないかと疑っていたが、2発、3発と出るアタックは紛れも無い雷魚のものだった。大粒の雨が一瞬弱くなった瞬間を狙っているかのように、彼のピンクのSKフロッグにアタックが連発した。

それは旧式のフロッグだった。何が効果的だったのか分からないが、とにかく雷魚はそのピンクのフロッグに反応を示した。そして彼は雨脚が弱くなったほんの1時間くらいの間に3本の雷魚を釣り上げた。しかしその彼とは逆に僕のフロッグには全く反応が無かった。

ハスの葉の隙間やちょっとしたオープンエリアに彼がピンクのフロッグを投入すると、こんな雨にもかかわらず不思議と雷魚はアタックしてきた。



時計が午後4時を差そうとしていた。既にフィールドに到着してから10時間が経過していた。上半身は汗と雨のせいで安いビニールカッパの下のTシャツがべっとりと濡れていた。それに、この天候のため、夕マズメというゴールデンタイムが来ることもなく、刻々と状況は悪くなっていた。友人のピンクのフロッグの効果も薄れ、アタックが途絶えていた。友人は帰りたそうな素振りを見せず、釣れない僕に付き合ってくれていた。ノーアタック・ノーフィッシュの僕が「帰ろうか」というのを待っていてくれた。

あと30分で止めよう。僕は残りの時間を集中して釣りをすることにした。それまで僕も彼と同じようにハスの中に投げ込んでは、ハスの葉の隙間やオープンエリアで雷魚を誘うというアプローチを繰り返していたが、その時ばかりは目線を変えて増水して水位が上がり、岸際のブッシュとハスの間に形成されたちょっとしたオープンスペースへフロッグを投入した。大粒の雨による水面への影響は大きかったが、セオリーどおりに波紋が消えるまでポーズを入れ、首振りアクション&ポーズを繰り返した。雨にかき消されないように大きなアクションを入れ、ポーズは短く取った。そして、そのアクションを2回ほど繰り返した後、首振りアクション中のフロッグに豪快なアタックが出た。

フロッグの色は茶色、そして空からは大粒の雨、僕はフロッグが消えたかどうか半信半疑だった。目視では確認できない状況のため、僕は軽くラインを張り、持ち込んでいるかどうかを確認した。すると、黒い8号のPEラインはスーッと右に走っていき、雷魚が完全に食い込んだことが確認できた。

アワセが決まり、激しいヘッドシェイクが始まった。10時間釣り続けてやっと出た1発のため、バラシてなるものかと僕は必死になって寄せた。水深のない岸際のオープンエリアでの激しいヘッドシェイクだったが、バラすこともなく、運良くランディングすることができた。痩せてはいたがイイサイズの雷魚だった。1日釣り続けて最後の最後に出たたった1発のアタック。あの時、あのタイミングで岸際のオープンスペースに投げていなかったら釣れなかっただろう1匹。
時の運・・・釣りの面白さを感じた一瞬でもあった。



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