Tough Condition
この日も朝から雨が降っていた。昨日の夕方から激しく降り続いていた雨は幾分弱くなっていたものの、水面でのゲームをするには強すぎる雨だった。

車に荷物を積み込みながら私たちの口からは愚痴がこぼれた。空は灰色の厚い雲に覆われており、天候が回復する見込みは全くなかった。朝一番はどのポイントに向かおうかと考えたところで、この状況ではどこも増水しており期待ができなかったので、とりあえず近くのコンビニで朝食を買うことにした。

サンドウィッチとお茶を買い、それをつまみながら地図を見た。昨日までにほぼ周辺エリアを周り尽くし、フィールド状況の把握は十分にできてはいるものの、この雨と増水では全く期待できるポイントが浮かんで来ない。フィールドのデータ量には自信があるが、さすがにお手上げだった。

隣のシートでは後輩が無言でパンをかじっていた。この釣行を心待ちにしていたにもかかわらず、全く釣れない、というより釣りにならない日が続くのは初心者の彼には酷だ。釣果が全てではないとは言え、釣りすらできない状況は空模様同様に私達のモチベーションは沈んでいた。

とりあえず車を出し、雨が降っても増水の影響をうけにくいポイントを目指した。

しかし、そういったポイントも田んぼから流れ込む泥水によって濁りがひどくて釣りにならない。私たちは惰性でポイントを周りつづけた。

この地方でボウズになったことは過去に1度もないが、午後3時を過ぎたころには、今日がその初めての日になるような気配が色濃くなってきていた。 岸際は増水の影響でストラクチャーとは呼べない状態になっており、ブッシュや葦周辺をしらみつぶしに攻めても偶発アタックすら出ない状況になっていた。

朝からノーアタックが続いており、ラン&ガンしてもアタックすらとれないことは分かっていたので、雷魚を見つけて狙い撃ちするしか釣る方法はないと思っていた。岸際、ブッシュの中、ゴミ溜まりなど雷魚が着きそうな場所で動きを見つけようと必死で探し続けていたが、見つけることができなかった。また、オープンエリアで呼吸に浮いてくる雷魚すらいない。

このままボウズで終わる訳にはいかない…・意地でも1本釣らなければというプレッシャーが押し寄せてきたが、手も足も出ない状況を打破することができないでいた。

今日は1発を逃したらアウトだということを肝に銘じ、キャストはしないで集中して雷魚の動きを探すことに専念した。


初日にいい感じで釣れたポイントに移動してみたが、水門を開けたようで流れが発生していた。

後輩の彼は初日に調子の良かったポイント付近で対岸にあるブッシュ際を攻め続けていた。私はここでもキャストをせずに増水の影響で岸際に寄せられているブッシュの周辺を注意深く見て周ることにした。

そして数百メートルほど歩いたところで、岸際に寄せられているブッシュとブッシュの隙間に上流に頭を向けて流れに逆らって泳いでいる雷魚を見つけた。こいつしかいない…。そう思った私はキャストをミスらないように雷魚との距離を詰め、そして着水音を立てないようにはるか後方の葦の中にフロッグを投げ込んだ。

ラインで刺激しないように注意しながら雷魚の後方からフロッグを通し、目の前で首振りアクションをさせた。その雷魚は体をくねらせて反応したものの、アタックまで持ち込めない。一度手前まで巻き取り、今度は流れに乗せて雷魚の鼻っ面までフロッグを後退させ、再度目の前でアクションさせたところ、今度は勢い良くアタックしてきた。
フッキングは成功したものの、近距離でしかもブッシュの上で暴れまくるため、いつフックが外されてもおかしくない状態に陥ったが、強引に抜き上げて無事ランディングすることができた。

釣れたことでプレッシャーから解放されたが、全く嬉しくなかった。正確に言えば、悪条件下で無理矢理に雷魚に口を使わせて釣れたからだ。それに強引に抜きあげたために陸に上がってからも暴れ回り、雷魚も体にキズを負ったからだ。

なぜそれほど躍起になって釣ったのか? 同行している彼から、私と同じ、もしくはそれ以上の釣果を釣りたいというライバル心的な気持ちがヒシヒシと伝わってきていたし、彼が私に「どうですか?出ますか?」と聞いてくる目には「あなたも駄目だったでしょ?」という確信めいたものが見えていた。私にはそれが、釣れなければ同等の結果なんだと言いだげに感じられた。だから私はどんな状況であろうが釣ってみせてやるという気持ちが強くなっていた。

正直、タフコンディション下での釣りは精神的に疲れたし、釣るには釣ったけれども、自分が目指すものではない…と落胆もした。本当であれば、ランディングなんて考えず、水面上でフックを外されたほうがいいはずだった。

フックアップに持ち込むまでのプロセスが大切であって、釣り上げて写真を残すことを気にするなんて愚の骨頂だということにあらためて気づいたし、それが分かっていてもできなかった自分を悔やんだ。


トーナメントではないので、勝ち負けなんて存在しない。それにそんなことを競う釣りではない。しかし、釣りという性質上避けては通れない部分でもある。でもそんなことを気にせず、ショートバイトやタフコンディションでも早アワセをしたり、小型であったり足場が悪い場合は水面上でフックオフするくらいの心の余裕が必要だと感じた。

減り行く魚と自己満足の追求。葛藤が頭を埋め尽くしているけれど、どこかで自分を納得させつつ釣り続けている。


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